クライアントは身の丈にあった暮らしを望んでいました。私は、住まいに対する理想や思い入れをきかせてもらいつつ、限られた予算からくる建築費用の調整を託されたのでした。
まずは土地探しです。「できるだけ安くて小さい土地を買ってください」と冗談半分に話し、近年拡張整備された道路計画によって分譲された、20坪の狭小変形地をクライアントが見つけてきました。
「こんな土地に住宅が建ちますか?」という問いに、「建ちますよ、やりましょう!」と直感的に即答したところから計画が始まりました。
配置計画は、周辺環境、敷地面積や形状を考慮し、建物を北側隣地境界線にできる限り寄せました。
1階には、駐車や設備の最小限の屋外空間と、主寝室や水廻りのプライベートな内部空間で構成しました。
東側の道路境界側は、木塀と竹の植栽で囲まれた前庭により、プライバシーを守りながらも、大きな開口部が外部とのつながりを生みます。
また、2階部分に跳ね出したバルコニーや玄関アプローチ上部の軒天井が、主寝室と前庭、玄関と玄関ポーチの一体感をだし、より空間が広く感じられます。
2階には、時間帯によっては人通りの多い道路に面した立地の特性から、キャンチレバーを採用し、まとまった広さのLDKを配置しました。LDKは、敷地を素直に読み込んだパースペクティブな平面形状となっており、余白のある前面道路に対して、視覚的な広がりが感じられる空間を意識しました。