01 伊丹の家

 敷地は閑静な住宅街にあり、築50年以上経た、かつてはご主人のお祖父様が住んでいた家に、クライアントご夫婦は結婚後に住みはじめました。正式に依頼を受ける2年ほど前から、建物の改修などの相談を受けていたのですが、老朽化、耐震性能不足を考慮し、新たに建て替えることで設計がスタートしました。

 離れた土地ということもあり、打ち合わせは主にメールのやりとりとなりました。
それはお互いの都合などは関係なく、気兼ねない会話のようにときには冗談がまじり、本音も言いやすい、存外有意義で便利なものでした。見かえすと100通以上のメールが残っています。はじめの数回のやりとりで、おぼろげながら家の姿が現れてきました。早い段階でイメージを共有できた結果だと思います。

 先日半年ぶりに訪ねました。お子さまが小さいということもあり、未だに内部の使い方が固定されていません。前回お邪魔した時とは違った使い方がとても印象的でした。
6〜8畳単位で1つ1つの空間をつくりながらも家全体がワンルームのようなプランは、使い方を限定せずに、家庭的で親しみやすい雰囲気を与えてくれます。クライアントの、「この家はまだ完成形ではないです、これからがもっと楽しみです」という言葉からも、今後どんな暮らしのストーリーが展開されていくのか、とても楽しみになりました。

※建築と社会2018年8月(Vol.99 No.1157)掲載